人を憎いと思ったことはなかった。「淋しい」も「羨ましい」も「狡い」も全部ぜんぶ「わたし」の中にはなくて、ただ「わたし」は空っぽなだけだった。「彼女」がその一つひとつを「わたし」に教える。そうして「わたし」は知った。
世界は「わたし」を愛してくれなかった!
「わたし」だけが世界に愛されなかった!
不条理は精算されなければならない。不平等は正されなければならない。不誠実は罰せられなければならない。
誰もそれを成さないのなら「わたし」が成すほかはない。「わたし」の双眸は光を得た。「わたし」の世界には心が満ちた。嘆きを聞き届けられるまで「わたし」は振り上げたこの拳を決して降ろすことはないだろう。
それが他ならない「彼女」の望みであるのなら。