「わたし」なんていてもいなくても同じ。本当にそう思っていたかどうかなんて「わたし」にも、もうわからない。
ずっと、ずっと一人だった。
「彼女」が現れなければ「わたし」はずっとそのまま一人でいられた。
悲しいも淋しいも虚しいも憎いも知らないままで、「わたし」はずっと立っていられた。
楽しさは一瞬で消える。「わたし」は結局一人のままで、嬉しいを分かち合う相手もいない。幸せとは別離したままの時間は「わたし」にはただの苦痛で、そのことに気付いたとき、「わたし」は「彼女」のことを酷く恨んだ。
それでも。もう「わたし」は「それ」から手を離してしまった。
後悔も懺悔も、悔恨も「わたし」には届かない。
誰か。誰でもいい、誰か。「わたし」の過ちを救ってくれる誰か。
呼びかける声すら持たないと知って、「わたし」は己の無力を知るだけだった。